シロアリ被害にあわないための知っておくべき対策
住宅の被害で最も多いヤマトシロアリ
ヤマトシロアリは、北海道の一部地域を除いて全国に生息しています。4月中旬から5月中旬にかけて巣から飛び立ち、これを群飛(グンピ)と呼びます。
ヤマトシロアリは羽蟻の仲間ですが、羽蟻といっても実は自ら飛ぶことは出来ず、この時期、雨が降った翌日の気温が上昇する日、水が蒸発する際に生じる上昇気流を利用して、ハンググライダーのように羽で風をとらえて飛び立ちます。
地面に着地後は不要になった羽を自ら切り落とします。その後、雌が雄を引き寄せる誘引物質を出し、雄が寄ってきたところで、つがいとなり、新たな巣を作りを始めます。これらが後の女王蟻と王蟻になります。
出典:(株)三和技研
家に被害を及ぼすシロアリには大きく分けて以下の3種類があります。
①ヤマトシロアリ
②イエシロアリ
③アメリカカンザイシロアリ
①のヤマトシロアリは北海道北部を除く日本全国に分布し、活動範囲は10m程度、湿っている木材を食べます。
②のイエシロアリは千葉県以西の太平洋岸に沿った温暖な地域と九州や南西諸島に分布し、活動範囲は100m程度、乾燥した木材でも水を運んで湿らせながら食べます。
③のアメリカカンザイシロアリは輸入家具や建材などを通して国内に入り、「カンザイ=乾材」、つまり湿気を必要とせず、乾材でも食べてしまいます。
湿った木がシロアリのエサとなる
シロアリは、外気や光を嫌う為、人目に触れるのは、一斉に外に飛び立つ月中旬から5月中旬の時期だけです。家から羽蟻が出てきて、慌てて駆除を行おうとしても、残念ながらそこはすでに被害を受けた後なのです。
家から出ていく時は一斉(群飛)でも、やって来る時はつがい(2匹)ですので”蟻一匹通さないで監視する”というのは、現実的に不可能です。
したがって、シロアリから家を守る防蟻処理を5年に1度程度行ったり、家の外周部にシロアリの食べ物となる木材などを放置しておかないことが、シロアリを自宅に招かない秘訣なのです。
住宅の被害では、ヤマトシロアリとイエシロアリが原因であることが多いのですが、ともに乾燥した状態では木材を食べず、水分を必要とします。つまり、「漏水」「雨漏れ」が起こった場合は、このシロアリ被害のリスクも誘引してしまうのです。
シロアリ被害にあわれた例としては、屋根の雨漏り、浴室の漏水、ウッドデッキの腐食、庭への木材放置を原因としたものを確認しています。
住宅に被害を及ぼすシロアリにも何種類かいますが、そのほとんどはエサとなる木材を食べるために水を必要とします。つまり、雨漏りのある箇所や浴室、洗面所など水周りの漏水箇所は、シロアリにとって格好のエサ場なのです。
シロアリは外気や光を嫌って生活しているため、その目は退化しています。そのため、匂いを頼りにエサを探し出しています。特に腐り始めた木材からはシロアリが好む誘引物質が出ており、雨漏りや漏水による木材の腐食によってさらにシロアリから狙われやすくなります。
このように、蟻害と水には深い関係があるため、原因となりやすい水周りは、出来れば点検口から床下や屋根裏を定期的に確認しておくことが非常に大切です。
蟻道(ギドウ)
メディアを通してシロアリ被害のことを耳にしたことがある人は多いと思いますが、実際目にした人は少ないのではないでしょうか。その為、居住者の意識は薄くなりがちで、大きな被害となるまで見過ごしてしまうケースも少なくありません。
シロアリの移動手段は、蟻道(ギドウ)です。
群飛の際は外に飛び出しますが、シロアリは外気や光を嫌いますので、通常は蟻道(ギドウ)と呼ばれる土や粘土に唾液や排泄物を混ぜて作ったトンネルを目的地に向かって増設しながらその中を進んで行きます。
シロアリは通常、土中や樹木の幹中に巣を作り、そこに数万から数百万のファミリーが暮らしています。その巣からエサ場までをこの蟻道で結び、行き来しているのです。
土中や樹木の幹中にある巣を見つけることは非常に難しいことですが、蟻道は、特に家の外周部や床下がコンクリートで打たれていれば、その材質の違いにより、比較的見つけやすいはずです。
土が盛り上がったようなラインが続いていれば、シロアリの侵入を疑った方が良いでしょう。
シロアリ社会の階級
蟻とシロアリは、姿形がよく似ていますが、蟻は膜翅目(とうしもく=シロアリ目の旧称)と蜂の仲間、シロアリは等翅目とゴキブリの仲間で、全く異なった昆虫です。
また、その社会の仕組みにも違いがあり、蟻は雌中心で、女王と不妊の雌である働き蟻で構成され、雄蟻は一時的にしか生じない女性社会なのに対し、シロアリは、女王蟻・王蟻、副女王蟻・副王蟻、働き蟻、兵隊蟻とそれぞれの階級に雌雄が存在します。
①女王蟻・王蟻
1つの巣に1匹ずつおり、生殖活動に専念。
②副女王蟻・副王蟻
数匹ずつおり、女王蟻・王蟻がいなくなった時に代わりを勤める。
③ニンフ
新しい巣を作るために、羽蟻となって出ていく前の段階。
④働き蟻
全体の9割以上を占め、巣の修復や食料集め、子供の世話を担当。
⑤兵隊蟻
全体の3%程度。外敵と戦ったり偵察や仲間の護衛を担当。
人もシロアリも社会を作ると、大まかなシステムは同じですね。なんだか大多数を占め、雑務をこなしている働き蟻に親しみを感じます。