【素人では見抜けない?】見た目がきれいな中古住宅を購入しても大丈夫?
地盤の確認
戸建住宅における不具合で、「地盤沈下」が原因であることが多いと言われています。
2000年以降の住宅では「地盤調査」が積極的に行われるようになりました。
これは、建築基準法施工令および告示により「地盤が安全であることの確認」が求められ、その方法まで明記されるようになりました。
地盤調査がきちんとなされているか、また調査結果データによる基礎の選択の判断が適切かを確かめる必要もあります。
しかし、中古戸建住宅の場合、地盤に関する資料が保存されていないケースが少なくありません。これは書類の紛失に加え、交付義務がない為、買主に手渡されないケースが多いことにも原因があります。
では、資料がなければ地盤が安全かどうか確認できないのでしょうか?そんなことはありません。
新築とは、土地上に家屋分の重量を新たに加える行為でもあります。
その重量に対して地盤の強さ(地耐力)が負けてしまうと徐々に建物が沈んでしまいます。通常この場合の沈みは築5~6年で落着き始め、築10年ほどで終息するといわれています。したがって、一定の築年数を経た中古戸建住宅は何よりの地盤実験モデルともいえるわけです。
<誰にでも簡単にできる地盤のチェックポイント>
近隣
- 塀が傾いていないか
- 道路が波打っていないか
- マンホールが浮き出していないか
- 電信柱が大きく倒れていないか
外まわり
- 基礎、外壁に大きなひび割れはないか
- 庭に陥没等ないか
- 家屋自体に傾きはみられないか
家屋
- 襖、ドアの開閉はスムーズか
- 襖、ドアを閉めた時に隙間はないか
- 壁紙にひび割れ、よれはないか
- 柱、壁に傾斜はないか
- 床に傾きは感じられないか
これらは特に知識、道具が必要というわけではありません。物件を見に行かれる際は、建物の内覧だけでなく近隣や外周部も確認してみて下さい。
床の不具合
生活する中で最も不具合に気がつく部位はどこだと思いますか?それは「床」なんです。考えてみれば住宅で唯一人と接しているのが床ですから、視覚、聴覚よりも感じられやすいのは最もな気がします。ちなみに住宅相談で上げられる不具合部位の約4分の1はこの「床」です。
そんな「床」の不具合事象トップ3ですが、多い順に傾斜(14.2%)、床鳴り(11.8%)、不陸(8.9%)です。これらの事象は一般の方でも実際に歩いてみればある程度感覚で確認できるものです。
また、新築の場合、湿気などの影響で木材が膨張収縮し、ある程度の時間が経過してみなければ分からない点もありますが、中古住宅の場合、木材の動きもある程度おさまっているので、現状で判断することができます。
では、床の確認をする時の注意点を2つご紹介します。
- スリッパを履かない。
- 水周り周辺は重点的にチェック。
お客様にスリッパを勧めることは業者さんからすれば当然のことですが、履いてしまうと傾斜・不陸を感じにくくなってしまいます。プロの建物検査でも素足で行うのが普通です。
木材が湿気乾燥の程度で膨張収縮する性質上、水周り周辺で比較的不具合が多く起こります。中古住宅の場合は、すでに一定の時間経過がありますので、重点的に歩いて確認してみましょう。
補修方法の具体的な打合せや、瑕疵である可能性の推察等に関しては、一般の方には困難ですが、現状はどうか、我慢できる程度なのかということに関しては十分確認できます。
内覧時には、足裏からの情報も駆使し、五感で確認して下さい。
雨漏り・漏水
戸建住宅に関する相談で不具合事象のトップ3は、「ひび割れ」「雨漏り」「漏水」と言われています。水に関する問題が2つもあげられています。ホームドクター の建物検査 でも、この「雨漏り」「漏水」の相談は多くいただいています。
以前行った建物検査の現場で点検口から床下をのぞいた時、担当者の顔がうつった(床下一面に水が漏水していた為)なんていう事もありました。
このようなケースは非常に稀ですが、その被害は屋根裏、壁内部、床下等居住者の目に届きにくい場所である場合が多く、気がついた時には大きな被害となってしまっているケースが少なくありません。加えて、「雨漏り」「漏水」はカビの発生、シロアリ被害、構造材の腐食を誘引する為、時間の経過とともにその被害を拡大させてしまいます。
その原因は、誤った施工方法の為であることも多く、たとえ材料を新しく交換し見た目が綺麗になっても、施工方法が正しく是正されない限りはいずれ同じことを繰り返してしまいます。
しかし、一般の方には業者から提示された補修方法が適切なものか判断することは非常に困難です。その為、不具合発見後にご相談いただく件数が多いのも「雨漏り」「漏水」の特徴なのです。
建物検査は不具合を発見するだけでは不十分です。居住者の方に代わって補修方法の打ち合わせやアドバイスを業者と行い、不要な心配やストレスを軽減させることも重要なのです。
書類の重要性
一戸建住宅の購入時、または自宅の売却時に下記の書類があると相手方も安心できることになります。
①最寄り駅から現地までの案内図
②建物配置図・外構図
③各階平面図(耐力壁位置記載のもの)
④立面図
⑤建築確認申請書
⑥矩計図(かなばかりず)
⑦電気・設備平面図
⑧内外部仕上げ表・仕様書
⑨地盤調査書・地盤改良施工報告書
⑩検査済証
⑪概要書
⑫第三者機関による住宅性能評価・住宅性能保証の取得の有無
⑬第三者機関による住宅性能評価書
⑭アフターサービス保証書
「そんなにたくさんいるの!?」と言われることもありますが、どれも大変重要な書類です。
例えば③各階平面図。耐力壁が記載されたものであれば、合わせて耐震診断、耐震補強計画を行うことも可能です。
⑤建築確認申請書と⑩検査済証は建築基準法上定められた検査を受け、合格していることを証明する書類です。この検査を実施していない建物では、建築基準法で定める「建物の最低限度の基準」すら守られているか分かりません。
新築時の建築確認申請図面と間取りが変っている場合は注意が必要です。壁を取り払って部屋を広くした、窓を大きくしたなどによって耐震性能が大きく損なわれているケースが多く存在します。
⑨地盤調査書・地盤改良施工報告書は、敷地の地盤の状況を確認することができます。戸建住宅では不具合事象の多くが地盤に起因するものであると言われています。新築時に行われたこれら調査データを確認することは、非常に重要です。
よく販売業者からチラシ1枚しか渡されなかったというケースを耳にしますが、中古は新築に比べ保証期間も短く、範囲も狭い為、より十分な検討が必要です。大まかな概要を記載した1枚のチラシだけでは、あまりにリスクが大きいと言えます。
また完成物件では、破壊検査を行うことは通常できません。書類が無いことで確認できない項目もたくさんあります。購入後リフォームや増築、補強工事を行う場合も、図面の有無は重要です。
住宅を購入する際どうしても建物に意識が向かいがちですが、上記を参考に可能な限り書類を受け取るようにして下さい。
第三者のプロによる建物検査
建築、不動産は非常に専門性が高い分野です。販売者側と購入者側とで持つ情報に大きな格差がある「情報の非対称性」が生じています。その為、一般の購入者はどうしても一定のリスクを負うことになってしまいます。
では、適切な情報を販売者側から引き出せるかといえば、そこは利益の相反する立場。必ずしもそのまま鵜呑みにすることができるとは言えません。したがって、「第三者」の専門家がいま必要とされているのです。
このような中、中古住宅を扱う建物検査 では新築以上に、この「第三者性」を求められる場合があります。居住中の建物で不具合が生じたケースです。
通常、保証期間内であれば販売者側が補修工事を行います。しかし、購入者側はその方法が適切なものかどうか判断は困難です。さらに、一度不具合を起こしている販売者側、購入者側にも当然不信感があります。
このような状況の中、販売者側と購入者側の間にたち、厳しい判断や適切なアドバイスを行う為には、業者との利害関係のない「第三者」である必要があり、ひいてはこれが購入者側の安心、業者側の透明性にも繋がり、今後の両者の良好な関係を保つことに繋がるのです。
ホームドクターは、不動産、住宅、建設会社などの企業の資本にも属さない独立の会社です。また、不動産取引や建築の請負業務などを行っていませんので、業者との利害関係のない第三者として厳しい判断やアドバイスを行うことが可能です。
参考:一級建築士などのプロによる建物調査で本当の価値を確かめる
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