後悔しないための大規模修繕工事の設計仕様書のポイント
大規模修繕工事の設計仕様書作成でのポイントをご紹介します。
おざなりな設計仕様ではよい工事を行うことはできません。トラブルを防ぐためにも工事前の計画が成否を分ける事になります。
Contents
設計仕様書作成の重要ポイント
(1) 長期修繕計画書での今回の大規模修繕工事位置づけ
第一回目の大規模修繕工事予算が本当に必要な費用か(多すぎる、足りない)、第二回目の大規模修繕工事予算に対する積立予定は大丈夫か、機械式駐車場の更新費用は見込まれているか、エレベーターの更新費用は見込まれているか、など長期的視点に立って今回工事予算をどう位置付けるかを確認することが最も肝要です。
工事が終わってから長期修繕計画書で過大な値上が必要となれば工事費を削減すればよかったという後悔することになります。
(2) 重要度の優先順位だてた仕様選定
サブエントランスをオートドアにしよう、インターホンをカメラ付にしようといったグレードアップ工事をしても漏水しては台無しです。劣化診断から重要事項順に整理して打ち合わせいたします。
(3) 仕様選定時の幅のある選択肢の提示
外壁塗装でもアクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系といった様々な仕様があります。耐久性はいいけど値が張るフッ素系、クラック(ひび割れ)の多い部分には弾性系、といったアドバイスしながらの仕様選定を行います。
(4) 数量積算書の重要性
設計仕様書には設計数量積算書があります。これは実際の建物の塗装面積、タイル面積、防水面積、シール数量、床長尺シート張り面積などの数量拾いを項目別に記載します。そして仕様により公示価格から現在単価を入力します。
全数行なう仕様はこれでいいのですが、補修数量に関しては見込みとなります。そのため清算項目として竣工時に実際に行なった数量の増減を清算することになります。合計金額は従って不確定要素があります。
清算項目は想定数量より少し少なめにします。請負業者は見込み数量分の資材、職方を発注します。したがって数量減になると張り替えるほどでもないタイルも張り替えるようなことになりかねません。誤差がマイナスになっても管理組合様に損失にならないための配慮です。
実際の施工業者の相見積では単価の白抜きにした設計数量積算書を設計仕様書と共に配布します。そして各施工業者に単価をいれてもらいます。このような競争をしないと、公正な選定はできません。
(5) 安い工事には理由がある【失敗事例】
ある管理組合様から大規模修繕工事の竣工チェックの問合せがありました。
工事をやってみると、監督の対応も悪い、どこを修繕したのか明確でない、追加工事費が高いなど酷い工事をされてしまった、何とかして欲しい。
という内容でした。
工事契約は設計仕様・見積書があって成立します。どんな工事を契約したかも不明な状態では残念ながらお力添えはできませんでした。
透明性・公正性を持った業者選定のためにも設計仕様書は重要です。
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