中古住宅購入の注意点【一戸建て編 】物件調査のプロが解説します!
中古住宅は新築と比べて、やはり価格が安いところに魅力があります。中古一戸建ての不動産市場では、築25年でほぼ建物価値がゼロと評価されてしまいますが、物件によってはまだまだ使用可能なお得な建物も存在します。
その反面、無理なリフォームによって耐震性を失ってしまった建物や地盤の悪さから建物が傾いていて、長くは使用できないものも多く存在します。
物件調査のプロの視点から見た中古住宅の注意点を解説していきます。
Contents
まずは物件の立地を検討
ほとんどの方は今お住まいの地域で住宅を検討されるかと思います。一般的に、お子様の学区、通勤、買い物、病院などの要因で立地を検討されますよね?
一戸建て住宅にとっては、非常に大切な「建物の安全性」という観点からも立地を考えなければならないのです。
地震に対してはエリアとしてのゆれやすさ、水害については河川の有無や土地の高低など、建物や生活の安全性には立地が非常に大きく影響するのです。
「南関東地域でM7クラスの地震が発生する確率は 30 年間 で 70 パーセントと推定されている。」と内閣府が発表していますし、断層帯は日本のいたるところに存在しているため、地震を考慮した土地選びは大変重要です。
災害の影響がわかる資料
地震の影響は物件の建つ土地の地盤だけではなく、そのエリアが全体的に軟弱地盤であることが被害の大きさにつながります。現在、各自治体がホームページで災害時の影響、危険度などいろいろな情報を公開していますので確認してみましょう。
ゆれやすさマップ
出典:東京都江戸川区役所
河川や海の近くは地盤が悪く、ゆれやすいエリアとなっていることがわかると思います。
ゆれやすい地盤
出典:朝日新聞デジタル 揺れやすい地盤 (全国検索可能です)
洪水ハザードマップ
出典:東京都江戸川区役所
豪雨による浸水予測、河川の決壊時の浸水予測が記載されたものが洪水ハザードマップです。河川の近くではなくても豪雨時の浸水予測がある地域は、下水道の整備が整っていない理由により低い土地が浸水する場所です。過去の浸水履歴も役所で作成しているケースがありますので確認してください。
洪水ハザードマップ、ゆれやすさマップのほかに地域危険度マップ、地震防災マップ、液状化マップなど各自治体のホームページで確認して立地を検討する材料としてください。
国土交通省ハザードマップポータルサイト
住みやすさ、周辺環境がわかる資料
住宅を建設できる地域として都市計画法で定められた用途地域というものがあります。詳細な規制は各自治体で異なるのですが、主に住居系地域、商業系地域、工業系地域に分けられ、さらに細分化されます。
都市計画図
出典:東京都都市整備局
用途地域ごとに建ぺい率(敷地面積に対する建物の建築面積の割合)、容積率(敷地面積に対する建物延床面積の割合)、建物の高さなど各種制限が決められています。
低層住居→中高層住居→住居→商業→工業 と工業系に行くほどより高い、大きな建物が建てられるというイメージです。
低層住居専用地域では、建ぺい率40%、容積率80%というエリアもあり、敷地に対して小さな面積しか許可されていませんので、敷地にゆとりのある建物の高さも低い住宅街というエリアです。
商業地域では、建ぺい率80%、容積率1000%というエリアもあります。主に鉄道の駅に近いエリアで土地を有効利用しようという地域です。
物件は住居地域に建っていても、商業地域に隣接する場合はマンションなど大型の建築物が経つおそれもありますので注意が必要です。
用途地域による建築物の用途制限
用途地域には以下のように建てられる建物の制限もあります。
たとえば、商業地域が近ければ、カラオケボックス、バッティングセンター、馬券販売所、キャバレーなどの建築も可能となっています。
小さいお子様がいる場合には気を付けたいところですので、どのようなエリアで生活するのか、用途制限を参考にイメージしていただければと思います。
建物個別の要因を確認する
立地の特性を知った後にいよいよ不動産会社から物件情報を紹介してもらいましょう。ここからは物件個別の要因を判断していくことなります。
大きく分けると、「建物」と「敷地」の2種類をそれぞれ確認していきましょう。
建物の特性
旧耐震と新耐震基準
築年数によって大きく異なるのが耐震基準です。昭和56年(1981年)6月1日以降に建築確認申請を行った建物は新耐震基準となります。ここで大切なことは「建築確認申請を行った日」です。
6月1日以降に完成した建物でも建築確認申請日がそれ以前の場合は、旧耐震基準ということもありますので建築確認申請書を確認するようにしましょう。
旧耐震の建物でも耐震改修工事を行っている場合があります。図面などが残されていれば確認することも可能ですので合わせて確認しましょう。
また、平成12年(2000年)以降の住宅ではさらに建築基準法の改正により、より耐震基準が高くなりました。役所や建築確認検査機関より検査済証の交付を受け、間取り変更等のリフォームを行っていない住宅であれば、平成11年以前の住宅に比べて安心度は高くなります。
耐震診断
耐震基準のお話をしましたが、新耐震基準でも耐震診断の際には、築後10年経過した建物の耐震性は、経年劣化により70%まで低減して計算すると規定されています。
建築基準法をクリアするギリギリで設計されていた建物は10年経てば現行法の耐震基準は有していないことになります。
旧耐震の住宅は各自治体で耐震診断の助成金や耐震補強工事の助成金もありますので利用されることをお勧めします。
また、リフォーム工事により新築時から大きな間取り変更を行った建物も要注意です。耐震設計の知識のないリフォーム業者によって行われた工事は、耐力壁を取り払ってしまうことがよくあり、大きく耐震性が損なわれているケースをよく見かけます。
少なくとも建築確認申請時と間取りが違う建物は耐震診断を行って、現状の耐震性能を確認することをお勧めします。
参考:築10年を超える戸建て住宅は耐震診断が必要!地震が来てからでは遅すぎる
耐震基準適合証明
耐震診断を受けて現行の建築基準法の耐震基準をクリアしていれば、耐震基準適合証明書を発行してもらうことができます。
また、耐震基準に適合していない場合でも、引渡しを受けてから6か月以内に耐震補強工事を行って検査に合格すれば適合証明を受けられます。
適合した物件であれば、築20年を超えた木造住宅でも住宅ローン控除を受けることができます。所得税から10年間一定基準の控除を受けられますのでかなりお得な控除といえます。
また、瑕疵保険にも加入できますのでこの耐震基準適合証明をぜひ受けてください。
建物の劣化状態
内覧時にはなるべく長く時間を取るようにしてください。間取りや日当たりなども大切ですが、雨漏り、水漏れ、建物の傾きがないか、今後生活していく上で思いもよらない出費となる可能性もあります。
個人間の売買の場合、瑕疵担保責任(保証)をつけないまたは2か月くらいの短い期間の保証であるケースがほとんどとなります。引渡し後に不具合があったとしても売主に請求できないケースが多いと認識してください。
各ドア、サッシの開閉に問題がないか。外壁や基礎、室内のクロスにひび割れなどがないか。また、補修跡はないかなども注意が必要です。
室内の天井や壁にシミ、黒ずみがないか?キッチン、洗面所下に水漏れ跡はないか?
浴室がユニットバスではない場合、多くの住宅で水漏れが起こっていますので、築15年以上の建物はお風呂の交換工事を視野に入れなければなりません。
床下点検口や天井点検口があれば、必ず覗いてみることをお勧めします。異様な湿気、シミ、臭いなど、問題のある住宅には必ずなにかサインがあるものです。
あと何年使えるか、どこにどれくらい費用が掛かるか見極める必要があります。
国土交通省「中古住宅・リフォームトータルプラン」にてリフォーム価格の参考資料が発表されていますので、下記リンクよりPDFファイルをダウンロードして参考にされてください。
リフォーム価格の参考資料
敷地の特性
敷地と道路との関係
不動産の価格は、敷地と道路の関係によって大きく左右されます。
- 前面道路が公道か私道か
- 道路の幅員
- 道路に接した敷地の間口と奥行
公道で道路幅員が広く、間口も広い敷地が高く評価されます。個人所有の私道を通らなければ自分の家に入れないとなると注意が必要です。上下水道、ガス管の工事の際には私道の所有者に承諾を得なければならず、工事費用も個人負担となります。
建築基準法上の道路に接していなければ再建築不可(建て替え不可)となり、価値は大きく下落します。「再建築不可」の場合、広告に表示しなければなりませんので、小さな文字で書かれた物件概要をよく見るようにしてください。
「借地権」の場合も一見して価格が安く感じますが、借地権付き建物を購入した後にも月々地代が発生しますし、所有権移転や増改築、建て替えの際に承諾料を請求されることが一般的です。
宅地建物取引業法では、売買契約前に重要事項説明書を作成して説明することになっていますが、売買契約の当日に説明されることが多いので、よく理解せずに契約してしまうと後々後悔することになります。
少なくとも契約の数日前には業者から重要事項説明を受けて、疑問に思ったことはクリアできるまで質問するなり、専門家に相談することをお勧めします。
資金計画
住宅の購入にあたって、住宅ローンの返済額は大きなポイントになりますが、控除が利用できるか(プラスの要因)ということと、その他の出費(マイナスポイント)をよく理解して長期的な視野で資金計画を考えなければなりません。
住宅ローンシミュレーション
住宅ローンの返済額シミュレーションを行えるサイトをご紹介します。個人情報などを入力するサイトではありませんので安心してご利用できます。
住宅ローン控除
住宅ローンを利用して不動産を購入する場合に、一定の要件を満たしていれば所得税より税金を控除してもらえます。
中古住宅の場合、まずは以下の要件を最低限クリアしているか確認してください。
適用要件(一部抜粋)
- 築20年以内(マンションなどの耐火建築物の建物の場合には25年)もしくは耐震基準に適合する建物であること
- 延床面積(登記簿上の面積)が50㎡以上
(注) 「耐火建築物」とは、建物登記簿に記載された家屋の構造のうち、建物の主たる部分の構成材料が、石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造(軽量鉄骨造は含みません。)、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造のものをいいます。
前述しましたが、築20年を超える建物であっても耐震基準に適合していれば控除を受けられます。耐震基準に適合しない建物であっても、取得後6か月以内に耐震補強工事を行い検査に合格すれば控除を受けられます。
耐震補強の助成金等と控除も合わせれば、耐震性をクリアした住宅に安心してお住まいになれますので良い制度といえます。
控除の内容
- 取得してから10年間
- 年末の借入残高の1%
- 売主が宅建業者で消費税がかかる場合は最大年間40万円
- 売主が個人の場合は消費税がかからないので最大年間20万円
※ただし、控除前の所得税額を上限とする
※その他の適用要件がありますので国税庁HPで詳細を確認してください。
固定資産税・都市計画税
住宅を所有していると毎年課税されるのが固定資産税・都市計画税です。
固定資産税・都市計画税の税額は固定資産税評価額をもとにした「課税標準」に税率をかけた金額となります。
税率
固定資産税=課税標準(固定資産税評価額)×1.4%
都市計画税=課税標準(固定資産税評価額)×0.3%(上限)
上記はあくまで標準の税率ですが、住宅用地には一定要件を満たせば軽減措置もあります。
固定資産税
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 課税標準×1/6
一般住宅用地(200㎡を超える部分) 課税標準×1/3
都市計画税
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 課税標準×1/3
一般住宅用地(200㎡を超える部分) 課税標準×2/3
固定資産税評価額
固定資産税評価額は各市町村が個別に評価して金額を決定します。評価証明書や課税明細書に評価額が記載されていますが、手元になく、評価額が分からない場合に公示地価をもとに概算で計算してみましょう。
固定資産税評価額は公示地価の約70%といわれていますのでこれを参考として利用します。(参照:国土交通省HP))
税額のシミュレーション
<条件> 公示地価20万円/㎡、敷地100㎡の住宅地として計算
・固定資産税
(課税標準額 200,000×0.7×100×1/6)×(税率 1.4%)=32,666円
・都市計画税
(課税標準額 200,000×0.7×100×1/3)×(税率 0.3%)=16,999円
土地の税額合計は49,665円となります。
※あくまで目安ですので正確には管轄の都税事務所、県税事務所に確認してください。
建物(家屋)の評価
単位当たり再建築費評点×経年減点補正率×床面積 ×評点一点当たりの価額 = 家屋の評価額
建物の評価額は売買価格ではなく、総務大臣が定める固定資産評価基準となりますが、建材一つ一つに評点を付けているため、再建築評点を算出するのは非常に難しいです。
一般的な住宅は新築時の建築費の5割~7割が再建築費の目安となります。これに経年原点補正率をかけると家屋の評価額となります。
家屋の評価額シミュレーション
(条件設定)
・新築時2,500万円の住宅と仮定
・再建築費は6割と仮定
・一般的な評点としての補正率50,000~79,000点未満と仮定
・築18年の住宅
2,500万円×0.6×0.26 = 390万円(評価額) となります。
固定資産( 建物年額) 390万円×1.4% = 54,600円
都市計画税(建物年額) 390万円×0.3% = 11,700円
建物の税額合計は66,300円となります。
※上記金額はあくまで目安です。
なお、税金の支払いは一括払いか年4回の分割払いとなります。
定期的なメンテナンス費用
分譲マンションの場合は修繕積立金という共用部分のメンテナンス、修繕にかかる費用を強制的に積み立てますが、一戸建て住宅では所有者個人がメンテナンスや修繕費用を計画的に準備しなければなりません。
建材には一定期間の耐用年数があり、屋根や外壁は15年前後で補修工事が必要となります。水回りの設備(キッチンやお風呂、トイレ)も長くて20年程で交換や補修工事が必要になってきます。
その他にお金のかかる設備で交換が必要になるものとしては給湯器があります。10年~15年で15万円ほどの出費となりますので準備が必要です。
住宅設備以外にもエアコンや冷蔵庫、洗濯機などの家電も10年程度で交換が必要になる出費の大きなものとなります。
購入した後も税金や修繕費用が掛かることに注意が必要です。資金計画が破たんして住宅購入が重荷にならないように肝に銘じておきましょう。
まとめ
中古一戸建て購入時の注意点としてご案内してきましたがいかがでしたでしょうか?
とくに中古一戸建ての場合には、建物ごとに大きな差があり、一概に築何年だから良い悪いといえるものではありません。定期的なメンテナンスを行ってきた住宅はまだまだ利用できる建物もたくさんあります。
地震による災害も多くみられるようになり、地震に強いエリア、地震に強い建物の見極めも大変重要なポイントとなりますのでその参考になれば幸いです。
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