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大規模修繕はマンションの資産価値を左右する!

 2017/03/20 マンション 大規模修繕 購入時の知識
この記事は約 13 分で読めます。
マンション

マンションは12年~15年毎に建物の保全を目的に行う大規模修繕工事が行われます。
コンクリートの構造体、その皮膜としての塗装、タイル、防水工事を適切な時期に行うことによって、建物を永く使用できることになります。

さらに金属製手摺や扉、サッシなども修繕工事を行わないと劣化が進行し、補修では対応できなくなり、入れ替えなどの改修が必要になってしまいます。

費用対効果を考慮して補修を適宜行うことによって、マンション主要構造部の躯体コンクリートを永く使用できるようになります。補修は化粧直し効果もあり、清潔な住環境を保つ効果がひいては資産価値を守ることになるからです。

ここではマンションの資産価値を守りながら、無駄な修繕費用の出費を抑えるための大規模修繕の正しい知識をご紹介していきます。

 

大規模修繕の対象となるのは共用部分

分譲マンションは、専有部分(下図の赤線で囲った部分)、それ以外の共用部分に分かれます。

共用部分

 

<共用部分>
・共用廊下
・外壁
・天井、床スラブ、戸境壁などのコンクリート躯体
・階段
・エントランス
・エレベーター、エレベーターホール
・玄関ポーチ
・バルコニー、ルーフバルコニー
・1階専用庭
・駐車場、機械式駐車場
・メーターボックスとその扉
・給排水竪管(たてかん)
・電気設備、廊下の照明設備
・トランクルーム
・管理室、集会室、機械室  など。

 

この中でバルコニーや専用庭、駐車場などは共用部分でありながら専用使用している部分となります。また、規約よって各マンションで違いはありますが、以下の部分も共用部分に設定されているマンションがほとんどです。

・玄関扉
・ポーチ等の扉
・サッシ(窓ガラス・窓枠)

 

分譲マンションの大規模修繕とは、以上のような共用部分を対象として定期的に行う修繕工事のことをいいます。

 

大規模修繕の時期はいつが適切?

劣化の状況

マンションの劣化は、経年とともに進んでいきます。主な原因としては、太陽による紫外線や熱、風雨によるものですが、厳密には建物の立地、形状、新築施工時の仕様によって各マンション毎に劣化状況に差が出るので適切な修繕時期も異なります。

15年ほど前までは、大規模修繕時期は10年に1度の予定を組まれていた計画書もありましたが、現在の長期修繕計画書では12年毎に大規模修繕を計画している例が多いと思います。建材の進化により、耐用年数が上がってきたためでしょう。

新築施工時の仕様や施工の状況が良い場合には12年よりも長めで工事を行うマンションもあります。

劣化曲線
(劣化曲線:保全の概念図)

上図はマンションの劣化を図示したものですが、ご覧のとおり劣化は直線的に進むのではなく、二次曲線的に進んでいきます。簡単に言うと防水や塗装・タイルの劣化は防水が切れた時点で水が下地に回り、劣化を加速度的に進めてしまうのです。

ある程度早い時期に修繕しておけば簡易な補修で済むものを放っておけば交換が必要になるというイメージで、修繕工事費用も高くなってしまいます。

足場設置費の節約

大規模修繕の工事費に大きく影響するのは「足場」の設置費用です。工事の為に設置して、工事が終われば撤去してしまうのものですので、モノとして残らない必要経費です。

タイルの付着力に問題がある箇所は少しだとしても、シール(コンクリートの継ぎ目やサッシの廻りなどに施工するゴム状の防水材)の劣化が激しい、10年の耐用年数を超えているとなると、タイルの貼り替えとシール打ち替え工事を2度に分けて足場を設置するよりも1度で同時に工事を行った方が無駄な足場代を抑えることもできますし、年中工事を行っていて生活に不便をかけることも最小限に抑えることができます。

この為に足場を設置して行う工事を12年程度で一緒に行った方が全体的なメリットがあると考えられています。

長期修繕計画作成ガイドライン

国土交通省が発表した「長期修繕計画作成ガイドライン」の内容は以下のとおりです。

修繕周期の設定
修繕周期は、新築マンションの場合、推定修繕工事項目ごとに、マンションの仕様、立地条件等を考慮して設定します。また、既存マンションの場合、さらに建物及び設備の劣化状況等の調査・診断の結果等に基づいて設定します。
設定に当たっては、経済性等を考慮し、推定修繕工事の集約等を検討します。

長期修繕計画の見直し
長期修繕計画は、次に掲げる不確定な事項を含んでいますので、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直すことが必要です。また、併せて修繕積立金の額も見直します。
①建物及び設備の劣化の状況
②社会的環境及び生活様式の変化
③新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等の変動
④修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、消費税率等の変動
出典:国土交通省 長期修繕計画ガイドライン

ここでも修繕周期を何年と特定せず、マンションの仕様、立地条件、建物及び設備の劣化状況等の調査・診断の結果等に基づいて設定するとあります。

管理会社の提案を鵜呑みにせず、マンションにあった修繕時期であるかどうかの見極めが大切となります。

 

大規模修繕工事の期間はどのくらい?

マンションの総戸数によって異なりますが、おおよその目安は以下のとおりです。

~30戸まで  4か月半程度
30戸~200戸  5か月程度
200戸(単棟型)~  5か月半程度

300戸を超えるような複数棟・団地型は5か月半ほどの工期を棟ごとに分けてずらしながら、全体的には1年かけて行うこともあります。

A棟・B棟 3月~7月(春工事)
C棟。D棟 8月~12月(秋工事)

大規模修繕でよく言われる「春工事」・「秋工事」とは、1年のうちで一番熱い、一番寒い時期を避けるためです。足場やネットがかかってうっとうしい状態、エアコンの室外機を外して行う工事もあるため、居住性を考慮した工事計画なのです。

 

第1回目の大規模修繕工事の注意点

修繕積立金が足りなくなる?

第一回目の大規模修繕工事を目前に控えた管理組合は修繕積立金がマンションの一生の中でもっとも潤沢な時期であるといえます。

新築購入時に「修繕積立基金」として数十万円の一時金を預かり、また2回目、3回目の大規模修繕で行う給排水設備の修繕や、エレベーターの交換、サッシ、玄関ドア、インターホン、郵便ポストの交換などの必要がないために一番工事費が安く抑えられます。

修繕積立金があるからといって全て使ってしまい、後々の大規模修繕で費用が足りない管理組合が続出しているのが現状です。

新築当初から問題がある修繕計画

最近でこそ新築時から「長期修繕計画書」が作成されています。新築購入時にご覧になった方はいますか?

計画書によると、第2回目の大規模修繕では既に修繕費が足りていない計画となっているもの、もしくは値上げを前提として計画されているものに分かれます。

新築購入時に営業マンが提出する資金計画

「月々のローン支払額+管理費+修繕積立金」=月々の負担額→(家賃と比較

この月々の負担額を安く見せるために修繕積立金を安く抑え、それを補填するために修繕積立基金として一時金を徴収しています。つまり、マンションを売りやすくするために修繕計画はおざなりになっているということです。

2回目3回目の大規模修繕で積立金が不足することは。管理会社は当然わかっていますが、新築時のデベロッパーは管理会社の親会社。親会社の不備を指摘できるわけがありません。

 

第2回目以降の大規模修繕の注意点

第2回目の大規模修繕工事からは設備配管の更新等が必要になってきます。つまり大規模修繕工事費用が第1回目よりもかかるのです。

機械式駐車場も20年から30年程度で新規更新が必要でしょう。エレベーターも30年程度で新規更新を考慮する必要性がありますが、新築時、30年の長期修繕計画書には記載されていないものも多くみられます。

第1回目の大規模修繕工事直前が最も管理組合として潤沢な資金繰りが出来ている状況ですが、このときに財布の紐が緩み過ぎると後々困ることになるのです。

大規模修繕工事を目前に控えた管理組合においては次回と次々回の大規模修繕工事費用を考慮し、より正確な長期修繕計画書をもとに工事範囲、仕様の策定、予算の決定をお薦めします。

長期修繕計画書に30年後まで今の修繕積立金月額で足りる計画になっているか今一度確認することが重要です。

 

大規模修繕費用の相場はいくら?

前述のとおり何回目の大規模修繕かによって修繕費用は異なります。
また、建物の形状、単棟型か団地型か、劣化の進行状況は建物によってかなり差があります。

第1回目の大規模修繕の事例

工事単価表
※設計監理方式による事例

 

第2回目の大規模修繕の事例

工事単価表
※設計監理方式による事例

外壁や屋上防水の劣化度合いによってかなりのバラつきがあり、工事の内容、項目、仕様には大きな違いがあるため、比較することが難しいというのが事実です。

修繕積立金の不足によって断念した工事もありますので築何年で総戸数が何戸だから工事費はいくらと一概に言えないのがこの事例からもわかると思います。

管理会社がよく言われるのは、以下の金額でしょうか。(あくまで目安です)
・第1回目の大規模修繕工事で100万円~120万円/戸
・第2回目の大規模修繕工事で120万円~150万円/戸

 

大規模修繕工事を主導する2つの典型例

1.管理会社主導方式

マンション管理会社が主導して①建物劣化診断②設計仕様書作成③施工業者選定④工事監理を行う方式です。中には施工も自社で行う管理会社もあります。

管理会社は通常の管理業務と並行して一貫した責任を負うリスクを減じるために手厚い工事仕様を組む場合が多いです。手厚いならば結構ですが過剰な仕様では問題です。修繕積立金の無駄遣いとなってしまいます。

また工事自体を管理会社が元請となって行う場合には、施工、設計、工事監理の各々の責任を一社が負うため、設計通りに工事が行われているかを確認する「監理業務」が健全に行われるか疑問が残ります。

長年大規模修繕工事は管理会社主導方式によって行われてきました。管理組合ではたまたま回ってきた輪番制の理事が、面倒くさい時期に当たってしまったなと思っている人がほとんどでしょう。面倒くさいことを管理会社に一任して「おまかせ」していては適切な工事なのか、適切な価格なのか素人の管理組合員にはわかるはずがありません。

2.コンサルタント(設計監理)方式

管理組合が建築設計事務所などを代理人として立てて①建物劣化診断②設計仕様書作成③施工業者選定④工事監理を行う方法です。
この場合は施工を行う工事会社を別に選択する補助を行います。

コンサルタント方式では劣化状態を管理組合に報告し、設計仕様においては管理組合が負うリスクを説明して納得した上で仕様を決めることが本来出来る筈です。

そして公平性透明性を確保した施工業者選定を行い、競争原理を働かせて工事費用を安く抑えることができるということが大きなメリットといえます。

「施工」と「工事監理」を別の会社が行うため、第三者性をもってチェックすることができます。

 

大規模修繕業界の悪しき習慣

管理会社が工事の窓口となる

大規模修繕工事は管理会社にとって大きな収入源となっていることをご存知でしょうか?

その他にも貯水槽方式から直結ポンプへの交換、エレベーターの交換、インターホン交換工事、LED証明への交換工事、電力会社の変更、インターネット回線工事などあらゆる場面で管理会社の収入源となっています。

理事会に出席して工事の予定や予算を知っているのは管理会社です。工事の予定も知らない施工業者はマンション管理組合に対して直接営業、提案することはほぼ不可能です。施工業者にとって大規模修繕工事を受注できるかどうかは、管理組合との窓口になる管理会社との関係性が最も重要なのです。

業界の構造

管理会社経由で施工業者が工事を受注した場合はその見返りに、管理会社へ報酬を支払うのは業界では一般的なことと認識されています。管理会社への報酬額は工事費の20%~30%が相場で、100戸程度のマンションでは工事費が1億円を超える場合がほとんどになるため、報酬額は2,000万円を超すことになります。

管理会社の推薦する業者を数社紹介されたとしても、内輪の相見積りではどの会社が受注したとしても管理会社の報酬分が上乗せされ、競争原理が働かない施工業者の選定方法では、工事費が高くなるのは当然のことでしょう。

管理会社も管理組合へ営業をかける

大規模修繕工事を控えた時期になると、頼みもしていないのに管理会社から無償で建物劣化診断レポートを提出してくるケースが多々あります。修繕経験豊富な建築士が建物の状況を詳細に確認し、レポートを作成するには10日ほどかかります。

この費用はいったい誰が負担しているのでしょうか?

無償でこのような詳細なレポートを出してくれたと感心している場合ではありません。管理会社はれっきとした営利企業です。その後の工事受注を目的としての先行投資であることは明らかです。

実はこの建物劣化診断調査もこっそり施工会社や建材メーカーにやらせているケースがほとんどなのですが、施工会社や建材メーカーは工事の受注窓口となる管理会社からの依頼を断るわけにはいきません。

結果的に高い工事費を支払うことになり、無償の調査費?などいろいろな経費も結局は管理組合の修繕積立金から支払っていることになるのです。

管理会社と施工会社のこのような関係性では、適切に工事が行われているかチェックされているかも大いに疑問です。

 

第三者としてのコンサルタントを活用する

管理会社と施工会社のような関係性を持たない独立した立場のコンサルタント会社(設計事務所)を利用するいわゆる設計管理方式を選択される管理組合が多くなってきました。

管理会社の日常管理業務の不信感や大規模修繕工事の提案内容に疑問を抱く管理組合が多くなってきたためです。

しかしながら、コンサルタント会社の中でも管理会社と同じように施工業者と癒着して施工業者から報酬を得るような不適切コンサルタントが昨今では増えています。これでは第三者のコンサルタントを利用する意味がありません。

信頼できるコンサルタント会社かどうか見極めることが大変重要になります。
以下にコンサルタントを見極めるための指標となる項目を列挙してみました。

 

コンサルタントに求められる要素

1.透明性と公正性

  • 工事ありきではなく、現状の建物の状況を踏まえて適切な工事範囲や仕様を管理組合や修繕委員が納得する方法で提案できているか?
  • 先々の出費を考えて工事内容を提案できるか?
  • 工事の数量を証明する数量積算書や拾い書(外壁面積、床面積、シールの長さ、長尺シートの面積など)を提出することができるか?(数量をごまかしている場合はこの資料を提出しません)
  • 施工業者との癒着がない方法(新聞公募など)で業者選定を行うか?(癒着のないコンサルタントは20社程度の応募があります。数社しか応募のない会社は怪しい)

2.工事費を削減するノウハウ

  • どのような方法で工事費を削減するか具体的に示すことができるか?(そもそも施工業者と癒着していては工事費を削減できません)
  • 今までの工事費削減実績を示すことができるか?

3.工事品質を確保する

  • 手抜き工事を防ぐためにどのような方法をとっているか?
  • 担当者本人がタイルの浮き枚数や劣化数量などを足場に上って全数チェックを行うか?
  • 補修完了後に再度全数チェックを行うか?

4.住民の合意形成

  • どのような経緯でこの工事内容を選択したのか住民に理解・合意を得られるか?
  • 工事完了の数年後でも経緯を確認できる議事録や資料を作成するか?(理事は毎年変わるため、後々にも納得できる資料を作成できるか)
  • どのような資料なのかサンプルを提出させる。

5.その他のポイント

  • コンサルタントの報酬は安すぎないか?(安く受注して業者からのマージンで補填)
  • コンサルタント無料紹介?(無料の裏には何かある)

適切なコンサルタントは上記のような質問にしっかりと回答できることでしょう。
コンサルタントを選定する際にお役に立てば幸いです。

 

さいごに

マンション大規模修繕工事では様々な問題が隠されています。
築35年を迎え、修繕積立金が足りなくて適切な修繕も建て替えもできないマンションも多く存在します。

自分たちの家は自分たちで守る。

管理組合が結束し、知識を持ち、適切な大規模修繕・長期修繕計画とはどのようなものかを自分たちが持たなければ、無駄な費用がかかり、資産価値を維持することは難しいでしょう。

安心して永く、快適に住めることを願っております。

 

大規模修繕コンサルタント

 

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